痔ろう(あな痔)

痔ろう(あな痔)とは

痔ろう(あな痔)とは痔ろう(あな痔)とは肛門腺と呼ばれる肛門の2~3㎝奥にある細い管から、ばい菌が侵入して化膿した部分が「おでき」となり、少しずつ直腸と皮膚がトンネルで繋がる病気です。
特に男性に多く見られる肛門疾患で、初期症状には発熱や肛門あたりの腫れ・痛みがあります。
痔ろう(あな痔)は手術しないと完治は難しく、放置するとトンネルがどんどん枝分かれしていきます。
長く放置しただけ手術も複雑なものになるので、身体への負担も大きくなります。
稀に「痔ろうがん」を発症する方もいるので、異変に気づいたら早めに受診することが大切です。

痔ろう(あな痔)の
症状(進行度)

主な症状

  • 発熱
  • しこりのようなものがある
  • お尻が腫れて痛い
  • 市販の飲み薬や坐薬を服用しても良くならない
  • 排便時以外でも肛門が痛む
  • 肛門から膿が出てくる

など

進行度

初期

何度も続く下痢によって直腸のくぼみに便が溜まってしまい、ばい菌が侵入して膿の袋ができた状態です。
この痔ろう(あな痔)の初期症状を「肛門周囲膿瘍(のうよう)」と言います。

中期

ばい菌が侵入してできた膿の袋が、肛門の筋肉を貫いて、ろう管というトンネルをつくり、そのトンネルを通じて常に膿が出る状態です。
体の調子が悪い時ほど細菌感染しやすいため、よく膿も溜まってしまいます。

末期

便による細菌感染で炎症が何度も起き、最悪の場合はがん化する恐れがあります。
症状などから判断しますが、複雑化すると肛門周囲に何ヵ所も手術が必要な場合もあります。

痔ろう(あな痔)の原因

繰り返す下痢で歯状線にある肛門陰窩(こうもんいんか)の小さなくぼみに水溶性の便が入ってしまい、膿の袋である肛門周囲膿瘍ができます。
この状態が慢性化すると、皮下・筋肉・脂肪を貫いたトンネル(ろう管)ができあがり、痔ろう(あな痔)になるのです。
通常の便であればくぼみに便は溜まらないのですが、柔らかい便だと入り込みやすくなります。
体調不良が続く方は細菌感染しやすいので、痔ろう(あな痔)になる可能性があります。

痔ろう(あな痔)に
なりやすい人の特徴

お腹を下しやすい、肛門括約筋が緊張しやすい、ストレスが溜まっている、普段から緊張しやすい、お酒をよく飲む、タバコを吸う、糖尿病などがなりやすい人の特徴です。
これらは、免疫機能の低下を引き起こす原因となり、痔ろうも発症しやすくなります。
その他にも、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)から併発したり、切れ痔から痔ろう(あな痔)になってしまったりするケースもあります。

痔ろう(あな痔)の治療法

切開開放術(lay open法)

切開開放術(lay open法)比較的浅めの痔ろう(あな痔)を対象とした治療で、ろう菅を切って開放します。
「lay open法」とも呼ばれ、肛門括約筋を切除するケースはほぼなく、仮に切除するにしても少量なので支障をきたすことはありません。
また、再発の恐れもほぼない方法です。

括約筋温存手術(coring out法)

括約筋温存手術(coring out法)ろう管のみをくり抜いて、括約筋の切断は行わず傷つけないように行います。
便が溜まらないように肛門の中だけ縫合し、外側は縫合しません。

シートン(seton)法

シートン(seton)法複雑化した瘻管に医療用のゴム紐を通して、少しずつ縛りながら切開を繰り返します。
肛門括約筋にかかる負担を減らすことができますが、数ヶ月~1年ほどかかる方もいます。
ゴム紐が弛んでくるので、1ヶ月に1回程度のペースで、通院していただいた際に、ゴム紐を締め直しながら治療していきます。

痔ろう(あな痔)の症例

治療前

手術直後

治療後

治療名 切開開放術(lay-open法)
説明

肛門の痛み、排膿で受診 
診断:後方の低位筋間痔瘻(ⅡLs型)

治療期間 3ヶ月
費用 保険診療

痔ろう(あな痔)治療後の
過ごし方・食事

生活習慣

入院期間中はなるべく安静に過ごしていただきます。
通常、退院後3日程度は自宅安静をして頂きます。
その後は仕事復帰していただいて構いませんが、出血や痛みなどのリスク軽減のため、以下のようなことは許可が出るまでお控えください。

  • 激しい運動や力仕事
  • 旅行や出張(万が一の時に当院での対応ができないため)
  • 長時間の自転車や車の運転
シャワー・入浴

創部の状態を確認し問題なければ、通常は術後3日目から入浴またはシャワーをしていただきます。
ただし、長時間の入浴は出血を誘引するため、短時間でのシャワーや入浴を心掛けてください。

食事について

手術後は、脂肪や繊維質が少なく消化が良いものを摂取し、通常の食事に少しずつ戻していくと良いでしょう。
医師の許可があるまでは刺激物(コショウ、唐辛子、カレー、わさび)やお酒を控えてください。

痔ろう(あな痔)の
よくあるご質問

痔ろう(あな痔)は治るのに何日くらいかかりますか?

肛門周囲膿瘍は、抗生剤の治療後、1週間ほどで小さくなる方もいます。
トンネルが完成した痔ろう(あな痔)の状態になると、手術しない限り治りません。

痔ろう(あな痔)になると痛みは出ますか?

肛門のしこりや痛み、発熱などの症状が現れます。。

放置した痔ろう(あな痔)は悪化しますか?

悪化します。化膿がより深くなったり「あな」の形が複雑化したりします。
こうなると手術の難易度が上がってしまうので、放置するのは良くありません。

手術は必ず受けた方が良いですか?

痔ろう(あな痔)の原因を取り除くためには手術が必要です。
根本的な原因を解決しないと、何度も発熱や化膿などの症状が現れます。

術後はどのくらいで回復しますか?

重症度や手術の方法によって回復する日数は違います。
痔ろう手術の創が完全に治るまでは、単純痔ろうでは2~3ヶ月ほどかかり、複雑化していると遅くて半年~1年かかるケースもあります。
治るのに時間がかかる場合もありますが、ほとんどの方は退院して数日で通常の生活に戻られています。

術後の痛みはどの程度続きますか?

術後は3日程度痛みを感じ、排便の際に感じる痛みは1週間ほど続く場合があります。
痛みの感じ方は人それぞれですが、大抵は時間が経過するにつれて痛みが和らいでいきます。

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